2021年11月19日 「子育て世帯への給付金10万円の支給方法は、現金5万円、クーポン5万円相当に分ける」と岸田首相の率いる内閣府が発表しました。「10万円一括が簡単に支給できて、使い勝手も良く、貯金もできるのになぜ? クーポン5万円なんてハンターイ」と思われた方が大多数ではないでしょうか。
閣議決定の内容を確認してみましょう。
内閣府の広報資料より2021年11月19日閣議決定した「子育て支援の概要」から抜粋します。
子育て世帯への臨時特別給付
年収960万円以上の世帯を除き、0歳から高校3年生までの子供たちに一人当たり10万円相当の給付を行う。
5万円の現金給付 5万円相当のクーポン給付
概要
• 子供1人当たり5万円の現金を迅速に支給。
• 子育てに係る商品やサービスに利用できる、子供1人当たり5万円相当のクーポンを基本とした給付を行う。
予算額 = 1兆9473億円
内閣府 子育て世帯への臨時特別給付について
これに対していろいろな報道を見ると、ほとんど「5万円相当のクーポン」は愚策との意見が多いですね。
内閣官房の担当者の説明では、クーポン支給をした場合の事務費用は約967億円で、クーポン支給を行わず10万円を現金で一括支給した場合の事務費用は約280億円になる
FNNプライムオンライン
愚策との批判、その通りに見えます。現金よりクーポンの方が700億円近く経費が上がってしまうからです。
現金とクーポンの違い
現金とクーポンはどう違うの?
現金は文字通り、現実のお金ですね。何も疑問はないと思います。では、クーポンて何?
わかるのは、現金は何でも買えますが、クーポンはお金ではないので、使い道、期限や場所など、使用条件が指定されているはずです。なぜなら、もしクーポンで、いつでもどこでも何でも買えてしまったら、通貨が崩壊するでしょうから。
上記の「子育て支援の概要 」に「子育てに係る商品やサービスに利用できる」と書かれています。
このクーポンは 子育てに係る商品やサービスの利用にのみ使えるのです。これが現金との違いですね。
現金とクーポンどちらの給付が良いか?
さて、クーポンか現金どちらの給付が良いのか、それを見極める上で参考になるのが、1999年に給付された地域振興券です。当時はバブル崩壊で不況が深刻化していました。打開策として政府が国民に交付しました。
地域振興券 の交付対象者は、15歳以下の児童が属する世帯の世帯主(15歳以下の児童1人につき2万円) や老齢福祉年金の受給者等(2万円)でした。総額6194億円(内閣府)。利用期限は交付から6カ月間。
そしてこの地域振興券の経済効果はどうだったでしょうか。
政府はしっかり調べていました。
振興券を使った買い物のうち、振興券がなければ購入しなかったと回答した買い物の総額は、振興券使用額の18%程度あった。また、より高価な買い物や多数の買い物、ないし、振興券がきっかけとなって行った買い物によって、支出が増加したとみられる金額は、振興券使用額の14%程度あった。これらを合計して、振興券によって喚起された消費の純増分は、地域振興券使用額の32%程度であったとみられる。
内閣府 地域振興券の消費喚起効果等について
地域振興券による消費増加は32%ありました。 地域振興券 の総額6194億円の有効期限は6カ月なので、それまでに、ほぼ全額消費されたでしょう。だから1982億円(6194億円の32%)程度は消費増加になったのです。そして、消費の増加は1982億円だけではないですよね。仕入れ先、生産工場、労働者などへ循環するお金もその分増えて行く訳ですから、そこからの消費も増加したはずです。
子育て支援のクーポン5万円で消費増効果は何億円?
今回の「子育て世帯への臨時特別給付」で一人10万円給付が行われますが、その内5万円分をクーポンにするので、予算額が1兆9473億円の約半分がクーポンになります。9000億円以上ですね。
地域振興券の消費増効果を参考にすると、 9000億円 の32%の2880億円以上は消費増加になると推測できます。
クーポン交付の為に増える事務経費700億円を差し引いて、2180億円以上は純粋な消費増効果が望めそうです。もちろん、消費増は次の消費を呼び、循環して行きますからもっと大きな消費増が発生するはずです。こうして考えると、私には愚策には見えなくなりました。
まとめ
2021年12月21日内閣より都道府県知事宛の発表では、子育て世帯への給付金10万円は次の3択となりました。
(1) 先行給付金 5万円,追加給付金 5万円
(2) 先行給付金 5万円,クーポン給付 5万円相当
(3) 一括給付金 10万円
令和3年度子育て世帯等臨時特別支援事業支給要領
いずれの選択をしても、給付金の多くは国債の発行でまかなわれます。
給付金を切実に必要としている人がいます。一方、令和3年度の普通国債発行残高は990兆円です(国債発行額の推移(実績ベース))。2020年度の国の税収は60.8兆円ですから、年収の16年分を越える借金をしていることになります。日本国民はもう、少しでも国債発行額を減らし、税収を上げることに関心を持ち行動しなければ、いずれ国が破綻するのでは、と不安を感じてしまいます。
一括給付は、使う人には便利ですが、そこだけでなく、経済効果も上がる方法を考えることが重要ではないでしょうか。
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